文書の表題~「念書・請書・覚書・合意書・確認書」の違いは?
契約書を作るときには、必ず「契約書」という表題の文書を作らなければならないのでしょうか。
契約は、当事者の意思が合致すれば成立し、契約書は、その意思の合致があったことを証明するためのツールです。そうすると、意思の合致があったことを証明できるのであれば、文書の表題は何でもいいということになります。
実務上、意思の合致があったことを証明するための文書の表題は、「契約書」以外にも、「覚書」、「念書」、「請書」、「合意書」、「確認書」など、 様々なものが使われています。
これらの文書は、大きく分けて、契約当事者の 一方だけが署名するもの(「差入式」と言いま す。)と、契約当事者の双方が署名するもの(「連 署式」と言います。)があります。「念書」、「請書」については差し入れ式「覚書」、「合意書」、「確認書」については、連署式であることがほどんどです。
念書
どのような場合にどのような表題の文書を作るかについては、厳密な決まりがあるわけではありません。しかし、一般的に「念書」は、契約により債務を負っている一方当事者が、その債務の履行 を改めて約束する場面などで使われることが多いといえます。 「借用した金○○万円は、年月日までに必ず返済いたします。」などと書かれた念書がその例 です
請書
「請書」については、「発注書」や「注文書」を受け取った後に、その注文をお受けしますという意味で発出される場合が多いといえます(図4-2)。 「発注書」や「注文書」の送付が契約の申込みであり、それと同じ内容の「請書」を差し入れることが契約の承諾に当たります。 法的には、「発注書」と「請書」が1セットで契約書と同じ効力を持つことになります。 契約は、当事者の意思が合致して初めて成立するものですから、注文書と請書の内容が大き く違っていると、契約が成立したかどうかについて争いの元になります。請書を作って相手に 差し入れる場合には、注文書の内容と請書の内容がきちんと整合しているかについて、確認するようにしてください。
なお、この請書ですが、内容が請負に関するものである場合等には、収入印紙を貼る必要があります。
覚書
覚書についても、どのような場合に使うか決まりがあるわけではありません。 ただ、実務上、覚書は、契約書が既に作成されている場合に、①その細部を後に定める場合 や、②その内容の一部を変更する場面で用いられることが多いといえます。
例えば、①工事請負契約書に「報酬の支払方法については、甲乙協議の上、別途定める。」 などと記載がある場合に、別途、工事代金の支払方法を書いた「覚書」が作られることがあります。
また、②不動産の売買契約について、定型の売買契約書では、買主が登記費用を負担することになっていたところ、売主が値引きの代わりとして、登記費用をすべて負担することにした 場合などに、「登記費用は売主負担とする」などと書かれた覚書が契約書とは別に作られることがあります。なお、文書の表題が「覚書」であったとしても、その内 容次第では印紙税がかかることがありますので注意が必要です。
合意書・確認書
合意書・確認書は、契約書には書いていなかった事項について、あとから当事者が合意をした場合や、覚書と同じように、契約時に決まっていなかった取引条件についてあとから合意した場合などに作られることがあります。
合意書や確認書についても、法律上、はっきりとした定義があるわけでもなく、使われる場面も様々です。ただ、合意書や確認書という表題であっても、その内容が当事者の合意を証明できるものであれば、法的には、契約書と変わりません。