契約書の日付の記入、署名・捺印・割り印
契約書の作成年月日
契約書が作られた日付を記入するのが原則です。 当事者がすべて同時に署名(記名)・押印した場合には、その日付、何日かにわたって、順 に署名(記名)・押印した場合には、最後に署名(記名)・押印した日付が作成年月日になります。
基本的に、契約書を作った日が契約が成立した日と考えられます。この契約書の作成年月日ですが、実務上、空欄になっていたり、契約書の内容と矛盾する日付になっていたりして、あまり注意が払われていないことがよくあります。 当事者の間にトラブルが生じたとき、いつ契約が成立したかが重要になることもありますから、作成日付は忘れずに記入するようにしてください。
また、作成日付が契約書の内容と矛盾していないかも確認してください。例えば、平成29年 4月1日にお金を貸すとの合意が書いてある契約書の日付が平成29年8月1日付けだとおかしなことになりますね。
この契約書が作られたのは8月1日であって、4月1日には、そのような合意はなかったなどと言われても困りますから、作成日付は、実態と合うようにきちんと記入しましょう。
署名・捺印
契約書の末尾には、契約の当事者がそれぞれ署名(記名)・押印します。契約の当事者が法人である場合には、会社の代表者等、権限がある者の署名(記名)・押印 がなされます。
契約の有効性を巡るトラブルの中で、しばしば見られるのが、「契約を締結した者には、会社を代表する権限がないので、契約は無効である。」という主張です。
日本企業同士が契約当事者になる場合には、印鑑証明や登記制度があるので、誰に会社を代表する権限があるか、つまり、会社のために契約を締結する権限があるかわかりやすいため、このような主張をされることはまれです。
しかし、外国企業との契約の場合には、誰が会社を代表する権限を持っているかはっきりしないことは珍しくありません。会社を代表する権限がないものが、あたかも権限があるように 装って契約締結交渉をし、契約書にサインをするということがあり得るのです。
ですから、外国企業と契約をするときには、サインする者に会社を代表する権限があるかどうかをきちんと確かめる必要があります。具体的には会社の代表者から権利が与えられたことが分かる書面や、会社の内規等を提出してもらうとよいでしょう
契印・割印
契約書が複数ページにわたるときには、そのページの境目に契約当事者全員のハンコを押します。また、契約書に背表紙をつけて冊子のようにするときには、背表紙と表紙又は裏表紙の 境目に契約当事者全員のハンコを押します。 契印により、契約書の一部を差し替えたりすることが難しくなります。
契印と似たものに、割印があります。
契約書の正本と副本、原本と写しなどを作るときに、その両方にまたがるように契約当事者全員のハンコをおします。複数の契約書が同じ機会に作られた、同じ内容のものであることを 示すのが割印の目的です。
なお、契印や割印がなくても、契約書の効力には何の影響もありません
契約書には、基本契約書と個別契約書 がある
契約書には、「基本契約書」と「個別契約書」があります。 企業間の取引では、同じ相手と何度も繰り返し取引をすることがあります。 例えば、電子機器の製造会社が他社から継続的に部品の供給を受ける場合や、食品加工会社が原材料を継続的に仕入れる場合などです。
このような場合には、繰り返される取引に共通する事項を「基本契約書」で定め、個々の取引で変わる事項については、「個別契約書」で定めることがあります。
例えば、先ほどの電子機器の製造会社が他社から継続的に部品の供給を受けている場合、代金の支払方法や債務不履行の場合の損害賠償責任などは、すべての取引に共通しますが、購入する部品の量や価格は毎回変わります。そんなとき、「基本契約書」で代金の支払方法等を定め、「個別契約書」で購入量等を定めるのです。
ここで基本契約書と個別契約書の内容に矛盾があったとき、どちらが優先されるでしょうか。 この点について争いが生じないよう、基本契約書には、次のような条項が設けられます。
「第○条(適用) 本契約に定める事項は、本契約の有効期間中、甲乙間で締結される商品の個別取引契約(以下「個別契約」という。)に共通して適用されるものとする。ただし、個別契約において本 契約と異なる事項を定めたときは、個別契約の定めが優先して適用される。」
基本契約書にこのような条項が設けられることにより、基本契約と個別契約の間で異なる事項があるときに、個別契約が優先されることが明らかになります。
なお、一定の要件を満たす基本契約書には、4000円の収入印紙を貼らなければなりません。