Q.押印に使用されるインクは、青や黒を使用してはいけないのでしょうか？

押印には、一般的に朱肉の印肉が使用されています。では、朱肉以外のインキ、例えば、黒や青のインキのスタンプ台を使用することは法的に許されないのでしょうか？

そもそも我が国で、署名に加えて、一般に押印が広く求められるのは、一定の例外を除き法的な要請ではなく本人の意思の存在を署名に加えて、押印によって重ねて確認したい、という事実上の要請が広く慣習化したものだと考えられています。したがって、押印自体は法的な要請ではないのですから、印影の色について法的な制限があろうはずがありません。

それでは、押印には、どんな色のインキのスタンプ台を使ってもよいのでしょうか？

押印は、本人の意思をより明確に表すことを期待して行われるものであり、そのことから、押印は何より視覚的に明確・明瞭であることが重要なのであって、視覚的に明白・明瞭ならば、使用されるインキの色には、制限がないと考えることができます。

しかし押印が慣習によって求められているものであることから、使用するスタンプ台のインキの色がいかにあるべきかということもまた、慣習に即して選択することが適当だと考えられます。そして我が国においては、押印には、朱色の印肉を使用することが広く慣習となっているので、朱肉を利用することが適当ということができます。

（印鑑の基礎知識―知らないではすまされない― 金融実務研究会（著）より抜粋）