印鑑の基礎知識

ビジネスでよく利用される契約形態

皆さんの周りは、いろいろな「契約」であふれています。 皆さんが毎朝出社する会社のオフィスは、会社が貸主から借りている、つまり「賃貸借契約」をして、使っているものかもしれません。

また、会社は皆さんと「雇用契約」を結んでいて、皆さんは、その契約に基づいて会社で働いているかもしれません。もし皆さんの会社が何か商品を販売しているのであれば、会社の商 品を顧客に販売するのは、「売買契約」です。

会社で使うシステムを外部の事業者に開発してもらうのは、「委任契約」や「請負契約」ですし、会社が銀行からお金を借りているとすれば、それは「消費貸借契約」です。

民法は、典型的な契約の類型を3個定めています。これら3個の契約類型を「典型契約」といいます。

なお、どのような内容の契約をするかは、当事者の自由ですから、これらの典型契約ではない契約を結ぶことも可能です。

典型契約ではない契約を「非典型契約」とか、法律に名前がない契約ということで、「無名契約」といいます。

非典型契約には、例えば、リース契約、運送契約、出版契約、保守点検契約、警備契約、宿泊契約、業務提携契約、業務委託契約等、様々なものがあります。

非典型契約の中には、典型契約の2つ以上の要素をもつ混合契約という契約もあります。例えば、製作物供給契約と呼ばれる契約は、物の製作とその後の供給を内容としており、請負契約の要素と売買契約の要素を持っています。また、システム開発契約であれば、どのようなシステムを開発 するかについてのコンサルティングをする点は委任契 約、実際にシステムを開発する点は請負契約の要素を持っています。

契約が成立するとどうなる?~契約の効果~

契約が成立すると、その契約の効果として、当事者の間に、いろいろな権利や義務が生じます。

例えば、「売買契約」を例にすると、売主と買主の間には、次のような権利、義務が生じます。
売主①商品を引き渡す義務、②代金を請求できる権利
買主①商品を引き渡してもらう権利、②代金を支払う義務

また、「請負契約」であれば、発注者と受注者の間には、次のような権利、義務が生じます。
発注者①仕事を完成してもらう権利、②報酬を支払う義務
受注者①仕事を完成させる義務、②報酬を請求する権利

契約の相手に何かをしてもらう権利のことを「債権」といい、何かをしなければならない義務のことを「債務」といいます。

一般的に、「債権」、「債務」というとお金を払ってもらえる権利、お金を払わなければならない義務という狭い意味で使われることが多いのですが、実は、お金以外にも「商品を引き渡してもらう権利」、「仕事を完成してもらう権利」なども債権ですし、「商品を引き渡す義務」、「仕事を完成させる義務」なども債務なのです。
契約を締結すると、当事者は、このように、お互いに債権、債務を持つことになるのです。債権を持っている者を「債権者」、債務を負っている者を「債務者」といいます。

契約に違反したら? ペナルティはどうなる?

さて、契約を締結すると、その当事者は、お互いに様々な債権、債務をもつことになります。
契約により自分が負った義務を果たすことを、法律 では、「履行」すると言いますが、契約当事者がお互いに債務を履行すれば、契約はその役割を終えます。

しかし、すべての債務が履行されるわけではありません。売買契約で商品を引き渡す義務を負っている売主が商品を引き渡さないこともあるでしょうし、請負契約で報酬を支払う義務を負っている発注者が報酬を払わないこともあるでしょう。

このように、契約によって負っている債務をきちんと果たさないことを「債務不履行」と言います。

(これだけ押さえればOK 印鑑・印紙・契約書の基本がわかる本 斎藤健一郎(著)より抜粋)