基本の契約書パターン~基本さえ押さえれば様々な契約書に対応できる!

収入印紙 - 契約書のなかには、印紙税がかかるものがあります

例えば、金銭消費貸借契約書は課税される文書です。

なお、課税される文書か否かは、文書の表題ではなく、内容により決まります。例えば、 表題が「合意書」であったとしても、その内容が金銭消費貸借契約書であれば、印紙税がかかります。

また、契約書に貼付した収入印紙について は、「消印」をしなければなりません。「消印」とは、契約書と印紙にまたがって押す印影です。契約当事者全員が押す必要はありませんし、必ずしもハンコを使う必要もなく、署名でも消印できます。

契約書の表題

契約書の表題は、金銭消費貸借契約であれば、「金銭消費貸借契約書」、建物の建築請負契約であれば、「建築請負契約書」など、契約の内容がひとめでわかるものにする必要があります。

なお、「契約書」という表題だと、相手方に署名、押印してもらいにくい場合、法的な効力 は全く変わらない「覚書」などの名称をあえて使うこともあり得ます。

例えば、「連帯保証承諾書」という表題よりも「覚書」のほうが連帯保証人になる者に署名・押印をもらいやすいということは、感覚的にお分かりいただけると思います。

契約相手が契約書の作成にあまり前向きでない場合には、「契約書」以外の表題を使うことを考えてみても良いかもしれません。

前文

契約書には、表題のすぐあとに「○○株式会社(以下、「甲」という。)と、△△株式会社(以下、「乙」という。)は、本日、次のとおり、××契約(以下、「本契約」という。)を締結 する。」などという前文を置くことがあります。

前文は、契約の当事者がだれで、その当事者間でどのような契約が締結されるのかを明確にするためのものなので、1当事者との契約の概要をはっきり書いておく必要があります。

例えば、甲が乙にお金を貸す「金銭消費貸借契約」の場合、前文は、「貸主甲と借主乙は、 本日、次のとおり、金銭消費貸借契約を締結する」、コンサルティング契約であれば、「甲と乙 とは、甲が乙に委託するコンサルティング業務に関し、以下のとおり契約を締結する」などと、当事者と契約の概要を簡単に書いておきます。

ここで1点、注意していただきたいことがあります。皆さんは、このような前文をご覧になって、何か問題を感じませんか? 「貸主株式会社○○ 代表取締役甲野太郎(以下、「甲」という。)と借主株式会社AA代表取締役乙野次郎(以下、「乙」という。)は、本日、次のとおり、金銭消費貸借契約を締結する。」 前文では、契約の当事者が誰なのかはっきりさせる必要があります。

その観点から先ほどの前文をみると、契約当事者が株式会社○○と株式会社AAなのか、それとも代表取締役個人なのか、はっきりしません。契約当事者が会社である場合には、契約当事者をはっきりさせるという趣旨から、「貸主株式会社○○と借主株式会社AA」と書いた方がよいのです。

目的に関する条項

契約書の第1条には、目的が記載されることがあります。

例えば、製造物委託契約書であれば、
「第○条(目的)甲は、乙に対し、製品の製造を委託し、乙は、これを受託する。」
売買契約書であれば、
「第○条(目的)甲は、○○を乙に売り渡し、乙は、これを買い受ける。」
などと記載します。

契約により発生する権利、義務の具体的内容に関する条項

当事者間にどういう権利、義務が発生するかについて、はっきり書いておく必要があります。この部分は、まさに契約書の中心部分ですから、契約の当事者が相手に何を要求できるか、自分では何をしなければならないかについて、あいまいな部分を残さないよう、できるかぎり明確に書いておかなければなりません。

例えば、金銭消費貸借契約であれば、貸主甲は、いつ、いくらの金銭をどのような条件で貸し渡し、借主乙は、いつ、いくらの金銭をどのような条件で借り受けるのかについてはっきり 書いておかなければなりません。

借主乙は、いつまでに、いくらお金を貸してもらえるのか、利息はいくら払えばいいのか、いつまでにお金を返せばいいのかなどについてはっきりしないと困ってしまいます。

一方、貸主甲としても、いつ、どのような形で貸したお金を返してもらえるのか、利息はいくら払ってもらえるのか、返済が遅れたときにどうするのかなどについて、決めておかないと 不安でしょう。

貸主甲と借主乙は、これらの事項を決めて、きちんと契約書に書いておかなければなりません。

具体的には、契約書には
「利息年○パーセント 弁済期元金については、○年○月○日から○年○月○日まで、毎月○日限り、各金△△円、利息については、○年○月○日から○年○月○日まで、毎月○日限り、以下の方法により支払う。
支払方法
以下の口座に元利金を振込み送金する方法で支払う(振込手数料は、乙の負担とする)。」

などと書いておくことになるでしょう。 また、売買契約であれば、売買する商品は何なのか、いつ引き渡すのか、売買代金はいくらでいつまでにどのような方法で支払うのかについて、きちんと決めて契約書に書いておかなければなりません。 具体的には、「甲は、乙に対して、○年○月○日、乙が指定する場所において、別表記載の商品を引き渡す。」、「商品の売買代金は、○○円(消費税別)とする。乙は、別表記載の商品の引き渡しを受けた日から○日以内に、売買代金を以下の口座に振り込んで支払うものとする (振込み手数料は乙の負担とする。)」などと契約書に記載することになります。

どのような内容の契約とするかは、当事者の自由ですから、当事者が合意しさえすれば、例えば商品の売買代金を前払いにすることもできますし、支払日を契約締結日の3か月後にすることもできます。

繰り返しになりますが、大事なのは、当事者がどのような合意をしたのかが契約書上、明らかになるようにしておくことなのです。

(これだけ押さえればOK 印鑑・印紙・契約書の基本がわかる本 斎藤健一郎(著)より抜粋)