朱肉の種類・特徴・お手入れ方法

朱肉の種類・特徴・お手入れ方法

朱肉の種類について

事務用(布張りの朱肉)

銀行や役所の受付窓口に置かれている朱肉。朱肉といえばこのタイプを思い出す人も多いのではないでしょうか。印鑑ケースについている朱肉もこのタイプです。速乾性に優れ、メンテナンスや軽やいしやすいタイプもあることから普段のご家庭や事務処理などによく使われるタイプの朱肉です。また布張りの朱肉の中でも「速乾性」「スタンダードタイプ」と大きく2種類のタイプがあり、速乾性は朱肉が紙に浸透するように作られており、その名の通り浸透乾燥が早く、スピーディーな捺印作業と、天赦などの不正のリスクも少ないのが特徴です。スタンダードタイプは、用紙面にしみこむ顔料と用紙上に残る顔料とで速乾性と捺印の厚みを残すバランスの取れたタイプの朱肉です。

【布張りの朱肉のメリット】

速乾性があり、捺印後乾きやすい朱肉が液状のため、捺印し易く、ムラが出にくい補充インキで補充できるなどメンテナンス性が良い携帯ケースについているなど携帯性に優れているものが多く、持ち運びに便利捺印後の乾燥時間が短いため、転写などの不正リスクが少ない

【布張りの朱肉のデメリット】

鮮やかな朱色をしており、色に深みがない練り朱肉に比べ、印影の鮮明さにおいて見劣りをする時間とともに色褪せることがあり、長期保存の書類等には向かない

公用証券用・一般文書用(練り朱肉・練り朱肉)

公的文書や重要な書類での捺印シーンでよくつかわれるタイプの朱肉です。
布張りの朱肉が主流になる前は、一般的に「朱肉」と言われればこのタイプの朱肉を指していました。現在では「捺印の重要度」「朱の深み」「印影の鮮やかさ」などが重視される書類への捺印の場合に使えることが多いです。
仕事やプライベートで収容な役割を担う、または人生の大きな決断をする機会の多くなった年代からはいざというときのために手元に置いておきたいタイプの朱肉です。

【練り朱肉のメリット】

朱肉に色合い・深みがあり美しい印影の捺印がし易いくっきりとした鮮明な印影が押しやすい時間経過でも捺印がきれいに残り、長期保存の書類等に向いている

【練り朱肉のデメリット】

捺印後、乾くまでしばらく時間を要するため、布張りの朱肉に比べ転写などの不正リスクが高い固まりやすく、メンテナンスに手間がかかる持ち運びしにくい

朱肉の原料について

布張りの朱肉

一般的な布張りの朱肉の原料としてひまし油などの植物油、合成樹脂、顔料(色素)をスポンジに染み込ませています
※ひまし油…トウゴマの種から採取する植物油、石鹸や潤滑油、医薬品などの原料に使われることが多い。
最近では蓋や器なども環境に配慮されている商品も多く、「環境適合商品」や「エコマーク認定商品」も多く見受けられます。

練り朱肉

ひまし油などの植物油、白蝋(はくろう)、松根油(しょうこんゆ)と顔料(色素)をよもぎ・綿実等で作られた和紙などの植物繊維に練り込み作られています。
顔料は硫化水銀を用いられたことが一般的でしたが、廃棄の際の環境の影響等により、現在は鉄、モリブデンなどの化合物が主流となっております。
※白蝋(はくろう)・・・ウルシ科の植物から作られた蝋を日光にさらして作される蝋。
※松根油(しょうこんゆ)・・・まつの切り株から搾取する植物油
硫化水銀は水に溶けにくく、人体に影響のないものが利用されています。一般的な取り扱いを注意して利用すれば人体に影響を及ぼすことはありません。
※一般的な朱肉の原料について記載をしております。製造元、製品について原料・製造方法は異なります。

朱肉と紙の捺印適性について

それぞれの朱肉のタイプの商品特性により、捺印する紙により捺印後の印影状態が変わってきます。
下記の表では、速乾性布張りの朱肉・スタンダードタイプ布張りの朱肉・練り朱肉の捺印適性を一覧表で表しております。
下記一覧表を参考にしていただき、捺印の目的にあった朱肉をお選びいただければ幸いです。

タイプ 商品 捺印適性
和紙 薄口模造紙
(登記簿等)
コピー用紙
(PPC用紙)
上質紙
(契約書等)
布張りの朱肉
速乾タイプ
速乾シャチハタ朱肉など
布張りの朱肉
スタンダードタイプ
シクオス
練り朱肉 サンビー練朱肉など

※シャチハタ社・サンビー社の商品カタログから一部抜粋

朱肉の印影状態について

朱肉のタイプそれぞれの捺印された印影状態のイメージと特長を解説いたします。

布張りの朱肉(速乾タイプ)

速乾タイプの朱肉は用紙内に完全に浸透するため、印影の浸透乾燥が速く、スピーディーな捺印業務が可能です。
また用紙内に浸透するため、転写などの不正行為に対するセキュリティに強いのも特長です。

布張りの朱肉(スタンダードタイプ)

完全に用紙内に浸透する速乾タイプに比べ、用紙の上に少し朱肉を残し、印影の厚みを実現しています。速乾性と朱肉に求められる従来の印影の美しさのバランスを取ったタイプ。

練り朱肉

用紙には浸透しないため、印影の「深み」「鮮やかさ」など、印影のクオリティを重視した仕上がりになります。
その反面、朱肉が乾くまで少し時間がかかるため、転写等の不正を防ぐため、捺印後、完全に乾くまで注意が必要です。

※シャチハタ社の商品カタログから一部抜粋
※断面図は朱肉と用紙の印影状態のイメージです。

朱肉の手入れ方法

布張りの朱肉の手入れ方法

布張りの朱肉はメンテナンス性も優れた商品となりますので普段から特別なメンテナンスは必要ありません。
長時間蓋を閉め忘れ表面部分が乾いてしまった場合などは朱肉インキの補充方法をご参照ください

練り朱肉の手入れの方法

1.触って感触を確かめ、固まりすぎてカチカチ(練り直しがきかない)場合はレンジで少し温め、新しい練り朱肉を付け足します。
2.油分と顔料を混ぜあわせるため、練りやすいようにヘリを全体に差します。
3.固まっている表面をヘラでなり直し、柔らかい部分を押し上げる形で練り直します。
4.捺印時にムラが出来ないように表面を整え、完成です。

朱肉の補充方法

布張りの朱肉のインキの補充の仕方

1.朱肉を補充する前に(画像はシャチハタ速乾朱肉と朱の油)朱の油をキャップをしたままよく振ります。
2.キャップを外し、ノズルを盤面に軽く押し付けながら、少しずつ表面に均一に浸透するよう塗りこんで行きます。
3.朱肉が完全に浸透するまで少し待ち、ノズルに付着した余分な朱肉をティッシュペーパーなどで拭き取ってからキャップを閉めて補充完了です。

朱肉の交換時期について

布張りの朱肉の交換時期

上写真のように表面が黒ずんでいる場合、表面のスポンジが破れている、表面の張りがなくなってきているなどの場合は捺印時に印影が欠けたりするので交換した方が良いでしょう。

練り朱肉の手入れの方法

練り朱肉は足して練り直すことにより、何十年と使い続けることが可能です。
しかし、保存方法によっては油分がなくなり、ツヤが完全になくなってしまっている場合や、カビが生えてしまった場合があります。そのような状態になってしまった場合、交換時期と言えるでしょう。

朱肉の落とし方

1.白いタオルを2枚用意し、一枚を衣服の下に敷き、もう一枚にクレイジングオイルもしくは中性洗剤(台所用洗剤)を染み込ませます。時間が経った場合は漂白剤を使い、同じように落とします。
※漂白剤を使う場合は色落ちが目立たない場所で色落ちテストを行ってから実施してください。
※色落ちした場合は自宅では難しいのでクリーニングに出し、プロにお任せしましょう。

2.汚れがついている面を裏返し、下に敷いたタオルに汚れを移すイメージで朱肉がついた部分を軽く叩き、汚れを落とします。
3.汚れが落ちたのを確認し、洗剤がついた部分を綺麗に水洗いして完了です。

(ハンコヤドットコム https://www.hankoya.com/より抜粋)