Q.印鑑登録制度とは、どのような制度なのですか?

Q.印鑑登録制度とは、どのような制度なのですか?

A.個人の場合は、もっている印鑑を住んでいる市区町村に登録する制度であり、会社等法人の場合には、印鑑を登記所(法務局)に提出する制度です。

それぞれ必要に応じ、印鑑についての証明書の交付を求めることができます。

個人の印鑑登録制度

個人の場合の印鑑の登録とは、個人が住民基本台帳に登載されている、つまり住民票のある各市区町村(このなかには特別区、地方自治法に定める政令指定都市が含まれます)の定める印鑑条例の要求するところに従い、印鑑の先端に刻まれた紋様の写し、すなわち印影を提出し、その市区町村の印鑑登録原票にその登録を受けることを指します。各市区町村役場には印鑑登録の部署がありますので、そこで手続をとります。したがって、個人が、住民基本台帳の登録地を離れて印鑑を登録することはできません。

また、必要がなければ印鑑を登録しないこともできます。その意味で、個人は印鑑を登録するかしないかの自由があります。

そして、印鑑登録の根拠となる印鑑条例は、市区町村ごとにそれぞれ制定されますので、地域差が多少あります。これを統一する国の法律等は存在しません。明治時代に、現在と同じ市区町村で定めるようにされており、戦後の地方自治法も、印鑑登録事務に関する権限を市区町村に委譲しています。すなわち、全国1,916の市区町村で個別に制定されています(平成29年1月1日現在)。

ただし、内容をみると、ほとんど似たような規定になっています。その理由は、昭和49年2月1日に当時の自治省行政局振興課長から、「印鑑の登録及び証明に関する事務について」という各都道府県総務部長宛ての通知が出ているからです。これは全国的にある程度、統一的な基本方針を定めておくほうがよいという事柄について、指導指針を示しておりまして、各市区町村がそれに従っているからです。

しかし、詳細をみてみると、登録できる印鑑は市区町村により異なることもありますので注意が必要です。

印鑑の登録をしておけば、必要に応じ、印鑑条例に従い印鑑を登録した証明書を請求することができます。これにも各市区町村の独自性があり、用紙の大きさや偽造を防ぐ透かしにも差があり、発行費用にも地域差があります。

会社等法人の印鑑登録制度

会社等法人の印鑑の取扱いについては、商業登記法および商業登記規則等で定められています。そこでは「印鑑の登録」ではなく、「印鑑の提出」と表現されています。また、国の法律により全国で一律の取扱いがなされており、地域差はありません。

会社の印鑑は、個人の印鑑とは多少異なる取扱いがされるところがあります。

印鑑の提出については、商業登記法20条1項本文に「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない」と定められています。簡単に説明しますと、たとえば会社の設立を申請する者は、会社の印鑑を、その会社の設立登記と同時に登記所に対して提出することになります。

商業登記法で定める一定の登記を申請するときには、その申請書に押印する者は必ずその印鑑を提出しなければなりません。提出しないと登記そのものが実行されないのです。個人と異なり、提出しない自由はありません。

反対に会社等の法人の場合には、登記申請と離れた印鑑の提出のみという独立の制度は原則として存在しません(複数の代表取締役が存在する株式会社等で、一人の代表取締役が印鑑を提出ずみであっても、後から他の代表取締役について印鑑の提出ができるのは、例外です)。

また、個人と同じように、印鑑カードの交付を受けたうえで印鑑証明書の交付を登記所に対し請求することができます(商業登記法12条)。では、提出された印鑑は、どのように取り扱われるのでしょうか。登記所は、たとえば会社の設立登記の際に、商業登記規則5条に従って提出された印鑑届出書をつづり込む印鑑記録を調製します。また、印鑑記録を使用できないときに備え副印鑑記録を調製します(同規則6条)。

また、提出のあった印鑑および印鑑届事項は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することのできるものを含む)に記録されます(同規則9条6項)。

(印鑑の基礎知識―知らないではすまされない― 金融実務研究会(著)より抜粋)